伊藤 守著「こころの対話~25のルール」の中で、こんなエピソードがありました。
自分のことについて何でもはなしてほしい、という社長さんの話です。
社員約200名全員と、一人ひとり向き合って、社長である自分について思っていることを教えてもらうのです。
もちろん査定にはひびかない。
何でもOKだと。
このことを決行する前は、話を聞くことで立ち直れないのではないか、仕事がこのままできるか、など心配だったそうです。
早速始まりました。
最初は社交辞令的に、当たり障りのないことを言っていた社員たちも、「本当に言っていいのですか」と前置きのあとどんどん話し出したそうです。
もちろん、聞くには辛いことや怒りがこみあげてくる内容だったり、血圧があがって血管がきれるのではないか、というほどのことも、何度も。
その結果、
社員全員の話を全部聞き終わったその社長さんは、逆に自信がみなぎってきたのだそうです。
話をしっかりきいてもらった社員は、自分から雑用をいわれなくても片づけたり、納得がいかなくてなかなか動けなかった案件も解決していくことが多かったようです。
社長さんがみんなの話をしっかりきいたことにより、社長さんを取り巻く人たちとのコミュニケーションが、改善していったのではないでしょうか。
社長さんが、話を聞くときのポイントですが、
・査定などにはひびかないから、安心して本音をはなしてほしいといった。(テストなどでもないこと)
・「でも」、「しかし」、「そうは言っても」など、否定するようなことばを言わない。
・「それで?」「それから?」などの接続詞で話をフラットに聞いていく。
・途中で話の腰を折らない。
などがあります。
実は、話の内容というより、「聞く」という行為自体が大切なこと、なのだなと思いました。
社員の立場で考えてみます。
社長さんの嫌だなと思ったことを話してその内容を改善してもらうこと。
今回の場合は、「改善」といったことより社員一人一人に響いたのは、ほかにあると思います。
それは、マイナスのことでも最後まで、「本人の社長さんが社員である自分の話を聞いてくれた!」という行為なのです。
このことで、社長さんは信頼できる人だし、自分のことを大切に思ってくれている、と感じます。
社長さんも、胃がキュンキュン痛くなりそうな辛い話も聞くことになりそうですが、社員とその同じ時間を共有できたこと自体がうれしい。
また、否定しないで最後まで、約200人の話を聞ききった自分も誇らしい。
ダメだしに強い人、ダメだしにやたら弱い人がいると聞きます。
最上思考の強みを持っている人はダメだしに弱いそうです。
自分を改善するためというより、その目の前の相手とコミュニケーションをとりたいというのが目的なら、ダメだしでも、話をしっかり聞くということで、前に進めるようなきがします。
勇気は必要ですが。
する価値は大いにあると思います。